「暮らしの真ん中に 小さなギャラリーを」
毎朝の開店準備で最初に顔を合わせるのは、お店の真ん中に鎮座するこのジャパニーズヴィンテージのショーケース。元々はきっと、国内の商店や食堂で使われていた什器だと思います。誰かの大切な物をまもり、魅力を引き立ててきたケース。だからこそ、木枠にほんのり残る一つ一つのくすみや経年変化を見ると、愛着が詰まっているように感じるんです。
お買取りで初めて出会ったとき「たくさんの思い出がしまわれている」ような、あたたかい気配がすでに感じられました。丁寧に磨きあげられたガラスや、角がそっと養生されていた様子から、オーナーさんの「大切にしたい」という気持ちがしみじみ伝わってきます。こうしたお品物と対峙すると、常々「どんな場所・人々のもとで時間を過ごしてきたのか」と想像をめぐらせてしまいますね。
幅広なサイズ感もあって、いまはお店の中心的存在に。自然光がやさしく反射するケース上に商品をディスプレイしていると、物たちが自分の良さをのびのびと発揮するかのようです。
土のぬくもりが感じられる陶器を飾れば、ガラスの透明感と相まって奥行きある静かな空気が醸し出されますし、棚に落ちる影・やわらかな光がアートのような景色をつくってくれる日もあります。「収納するだけ」でなく、ひとつひとつに物語が宿るようなディスプレイを楽しめるのも、このケースの魅力。
お気に入りのリキュールグラスやドライフラワーの束を並べ、さらにはグリーンを脇に添えて窓辺へセッティングしてみるのも◎きっと、木漏れ日の下で穏やかに過ごす景色が浮かんできます。気取らず、自分らしい「暮らしの真ん中」をつくる場所として、このケースはぴったりだなと感じます。
いつかこのショーケースを迎えてくださる方も、自分の「とっておき」を並べながら、物と過ごすちょっとした楽しみやときめきを見つけてもらえたら―
そんなふうに願いながら、今日も心地いいディスプレイを考えます。
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