モノ語りヒト語り

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幻の辻が花

「辻が花」をご存知でしょうか?
「あぁ、絞りと染めのアレね」
「デコラティブで、豪華絢爛なきものでしょう?」

実を言いますと私もそう思っていたのです。本物の「一竹辻が花」を見るまでは・・・。

ある日、その幻ともいえる「辻が花」を買って欲しい、との話が舞い込みました。それが「初代久保田一竹、一竹辻が花」の訪問着、袋帯、道中着です。

スタッフ一同、きものコーナーの畳に集合し、「きさらぎ」という銘が箱書きされた桐箱を開けます。うこんの風呂敷をめくり、「一竹辻が花」と書かれた上等な畳紙(たとうし)を開けます。

重みのある紋織りの綸子(りんず)の生地で、淡い水色の地色が裾に向かって濃い青にぼかしています。そして、辻が花の代表的なモチーフである、八重の花、葉、葵の葉が眼に飛び込んできました。スタッフの感嘆のため息が漏れてきます。恐る恐る広げると、肩、胸、袖、裾に惜しみなく辻が花の模様が施されている贅沢な柄行です。

以前に、きもの雑誌に載っている一竹作品を見ましたが、比べ物になりません。絞りの立体感、ぼかし部分の色の変化、染めの刺し色、全体の流れるような柄付けの構成、どれをとっても技と天性のセンスが感じられ、上品な中にも迫力となって訴えかけてくるものがあります。

時価一千万円の代物です。きものに一度ほどお召しになったと思われる使用感があるものの、道中着は未使用のお品です。調べてみても二代一竹作は販売されていますが、この初代一竹の着物は流通していません。もう作ることが出来ないのですから、希少なお品であることも確かです。

わたしたちにこれだけの「きもの」をお売りすることが出来るのだろうか。不安がよぎります。

きものコーナーに写真をディスプレイして三日目のことです。あるお客様が是非見たいとのこと。

辻が花を見た瞬間「こんな素晴らしい辻が花はみたことないわ!」と驚きの声。

辻が花には、並々ならぬ迫力があるものなのでしょうか、たった三日の仮住まいで「くらしのくら」から旅立っていくこととなりました。それも驚きです。あわてて購入した「大衣桁」に掛けてゆったり眺める間もなく、「幻の辻が花」はこのように幻のごとくあらわれ、消えていきました。

(きもの担当~OM)

20070727

幻の『一竹辻が花』

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