モノ語りヒト語り

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「職人の弟子には本物だけを見せる」

今どき丁稚(でっち)奉公はないだろうが、職人の世界では弟子が親方の世話をしながら、その技術を習得していくという形態は残っているようだ。
 骨董の世界でも職人と同様、マニュアルがあるわけではなく、弟子はその世界のプロの背中を見て学ぶことになる。モノの価値を見極めることが一番重要だが、本物と偽物を見分けることも大事な仕事である。昔の骨董屋は弟子が入るとお互いに奉公に出し合って、そこで沢山の本物に触れるチャンスを作ったらしい。本物を見続けることがとても大事なのだ。偽物を見ないで本物だけに触れていれば、偽物に出合った時に「なにか違う」と目が違和感をおぼえるのだという。だから、偽物や質の悪い品物には触れさせないし、見せもしない。
「偽物を見て目を腐らせるな」ということである。

 これがまっとうな「モノの真贋」を学ぶ方法であるに違いない。この方法の問題は相当の年数がかかるし、コストもかかるという点だが、もっとも必要なのは辛抱する力なのかもしれない。

8月1日「くらしのくら」に新人が3名、弟子入り、いや入社した。
新人は掃除や先輩の世話を何年もするわけではないが、先輩の後ろについてひとつひとつ学んでいくという点では骨董や職人の弟子の学び方に近いかも知れない。
「教えてくれると思うな。先輩の背中を見てその技術を盗め」と今の時代に言えるわけでも無い。

このリサイクルという職人の世界では、新人だけではなく先輩にあたる私たちも常に勉強をしなければならない。
そこで、「それぞれのプロを目指せ!セミナー」と題し、貴金属とブランドについての社内での勉強会を実施した。閉店後1時間ほどの自主参加の講習会だ。
新人だけではなく、それぞれ違う分野の家具担当やネット担当も参加した。

<クレドブックの「プロの仕事ができる人」を目指して実践する。初回は貴金属とブランドに決まった。全11回のカリキュラムである>

 今回の講師を担当した高木泰知はこの業界37年というベテランである。若くして真珠の加工、卸、販売に従事した後、ジュエリー業界で宝石の卸と販売、その後大手リサイクルショップで貴金属やブランドバッグの査定業務を経て「くらしのくら」のスタッフとなった。
 ブランドバッグもほとんどが遠目から真贋を見極めることができるのはもちろん、
指輪を手に持ってその重さをほぼ正確に当てることができることからもその経験の凄みを知ることができる。言ってしまえば貴金属とブランドのリサイクル職人である。

<右より2人目が講師の高木泰知>
今回は9コマ目のグッチとディオールの見分け方と買い方のセミナーである。
他に見られないこの講習会の優れている点は、バッグや貴金属をその場で手に取りながら確かめていけることである。しかも、他ならぬ自分たちが買い取りしたお品物である。
レジュメで真贋の見分け方を学習し、実際のグッチのバッグで確認していく。革の手触りなどは実際のモノに触れないとわからないことも多い。

<現物は店舗で販売中のオールドグッチプラスショルダーバッグ。扱い品としてはそう多くは無いが、いつどんなお品物がお買い取りになるかわからないのがこの仕事である>

GUCCIのUの右と左の幅が違うとか、布の場合は織りが6本入っているのが本物とか多岐にわたり、その真贋鑑定技術はまあ大変なことである。思わず、もう少し丁寧にコピーを作ればいいのに、と不埒な感想を持つ。

ブランドにしても、貴金属にしても、本物だけに触れて、そこで養った眼力で鑑定できるようになるには気が遠くなるような時間がかかるに違いない。
ましてや、辛抱する力が衰えてきている私には5年も10年もかかる弟子の教育はデキそうにもない。
邪道であっても、本物と偽物を交互にルーペで吟味せざるをえないのだ。

毎日、シャネルの時計やエルメスの財布を持って出かけて行ける懐具合になればそれも
可能だろうが・・・・・・・・・・

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