モノ語りヒト語り

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七輪と着物とマンガと

「お団子を自分で焼ける喫茶店があるらしいよ」母がそう言ったとき、私はてっきり冗談かと思った。七輪で焼くって、キャンプの話?と思いきや、どうやら本気らしい。しかもその店、私の住んでいるエリアからはるか遠く。だが母は「焼きたい」の一点張り。「老いたら子に従え」をそっとしまいこみ、「若くても老いに従え」に宗旨替え。こうして私たちは電車で一時間以上かけて桜新町へ向かった。

駅に着くなり、まずは自転車をレンタル。目的は団子だったはずなのに、母がぽつりと「せっかく自転車借りたんだから、着物も見てみようか」と言い出す。娘の私は二十代、お茶のお稽古を始めたばかり。新品の着物はまだ早い、という母の持論により、着物のリサイクル店を探すことに。

スマホ片手に検索開始。東京は「生き馬の目を抜く」人がゴロゴロいる印象があって、慎重に選ばなければならない。選ぶ基準は、きれいなサイトでも値段の安さをアピールするサイトでもなく、その店について書かれたクチコミ。そこにこそ、その店の本当の姿が浮かび上がる。

決まった!なんともアットホームな名前の「くらしのくら」。ちょうどお目当ての団子の店の途中にある。自転車をこいで十分、ようやく到着したと思ったら、肝心の着物スタッフが外出中。まさかの空振り。仕方なく、先に団子のある喫茶店へ向かうことに。

そこはオシャレな雰囲気が漂う和風の喫茶店「おかげ庵」。椅子は昭和の喫茶店を思わせるゆったりしたソファと広めのテーブル。そんな椅子に腰かけて、七輪で団子を焼くという非日常体験に母娘そろって大興奮。「美味しかったよー!」と母が満面の笑みで言う頃には、団子の香ばしさとともに、旅の疲れもどこかへ消えていた。

再び「くらしのくら」へ戻ると、着物のスタッフが待っていた。着物と帯のコーディネートが絶妙。帯を変えるだけでこんなにも印象が変わるのかと驚きの連続だった。

母が最後に選んだのは淡いピンク色の無地の着物と若草色系花紋の名古屋帯。「お茶会にピッタリ!」との母の太鼓判で決まり。

<趣味でイラストをやっているので自分の着物姿を描いてみました。こんなカンジです。フェイス部分はちょっと盛ってますが、、、、>

 

ちょうど世田谷区の「せたがやのお店を応援キャンペーン」中(*)で20%のポイントゲット、さらにくらしのくらの会員登録で追加ポイント。買い物上手な母の顔が、団子のとき以上に誇らしげだった。(*「せたPAY」は世田谷区が中心になって作った独自のキャッシュレスシステムで区外の人も加入できる)

こうして、団子と着物に導かれた母娘の一日旅が終わった。予定通りにはいかない旅には想定外の楽しさがある。思い切って行った七輪団子のワクワクも着物を着るワクワクも冒険してみなければわからないことだった。くらしのくらの人たちとの出会いも。この一日の旅のおかげでお茶のお稽古もきっとうまくいく予感がする。

(付記)帰り際にレジにいたスタッフが「着物の入門としてはこのマンガが参考になるかもしれませんよ」と勧めてくれたのが、東村アキコさんの『銀太郎さんお頼み申す』。(2025年10月現在8巻まで発行)帰り道に本屋さんで早速購入。バイト先に現れた着物美人に感動し、着物の世界にのめり込んでいくZ世代の物語。着物のことは何も知らない<私と同世代の女性>が主人公なので、すぐに没入できる。マンガだけど着物と伝統工芸(陶芸)の奥深い世界が広がり、養蚕から草木染め、久米島紬、唐津焼などテンポよく知ることができる。

他人の着物の着こなし(着付けや帯の結びかた、柄の合わせ方など)を「間違っている」と一方的に指摘、指導する着物警察のエピソードにはドキドキ。だが、初心者にとっては単純に笑い飛ばすわけにもいかず、着物ワールドに入ることをビビッてしまうのだが、、、、、、、、、、。

主人公と同じく世間的常識もあやふやな私にとっては笑いながら勉強できたマンガでした。

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