モノ語りヒト語り

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赤いマシン

その真紅のボディーにヒトは目を見張る。60万円もする外国製のマウンテンバイクなど見たこともないのだが、その色合いとデザインが醸し出す色気に参ってしまった。

ウチの店はこんな自転車など扱ったことはない。持ってきた青年は自転車レースのプロを目指しているという。

「もうすぐ海外へ研修に行くので2台手放したいのですが、他のリサイクル店に持っていったら1000円なら買ってやると言われ悔しい思いをしたんです」と言う。

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1台はフランスのSUNN社約35万円。もう一台はアメリカのスタンプジャンパークロスカントリー用レーシングマシン、約64万円。

「いくらでもいいです」

そう言われても、“いくら”かが分からない。売れるかどうかも分からない。という訳で委託で預かることにした。

早速、店内に展示。これがなかなかの存在感で店の雰囲気も様変わりした。すぐに男性のお客様たちが注目をしはじめた。ハンドルを握ってみたり、またがってみたり、興味津々である。ところが面白いことに気がついた。奥様方の視線もなかなか熱いのだ。赤は誘惑的な色に違いない。

「うちの息子が今マウンテンバイクを探しているのよ・・・」
「旦那でも乗れるかしら・・・」

展示して4日目、ポルシェのマウンテンバイクを探してるというお客様の目に止まった。まずは試乗。店の周りを1周。どうやら気に入ってくれたらしい。あっという間に商談が成立した。

嬉しいのだが寂しいいつもの気分。あと3日で自転車の売主は日本を立つ。それまでにフランスの自転車は決まるのだろうか。

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