モノ語りヒト語り

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素敵なモノの話をする時間はきっと

私は店の斜め向かいでくらしのくら楽天市場店を担当している。
お買取してきた品々を検品、クリーニング、出品するのが仕事だ。
最近、扱った陶磁器やフィギュリンなどの中でいちばんのお気に入りは
薄緑色の、パラゴンのアンティークカップトリオだった。

つやつやしたその肌とゆるやかなシェイプの曲線、
それをなぞるような細くてきらきらした金彩は、
上品で、古い時代のものとは思えないほど磁器の質はよいが、
今どきのものと比べるとあまりに薄すぎて
実用的でないところにむしろ惹かれた。
そのパラゴンのカップを見てみたいというお客様がいらっしゃっている、
とスタッフから連絡がきた。
慌てて、倉庫からそれを探し出してお店へ向かった、気持ちは少し浮かれていた。

これを見たがっているお客さまはどの方だろうか、
聞いて向かった先にいたのは、控えめで品のよい女性だった。
近くのテーブルの上に並べて見てもらう様にすすめたところ、
繊細なカップがそうさせるのか、
触っていいものかためらっているようだった。
どうぞ手に取ってご覧くださいとすすめて、やっと手にとってくれた。
カップを顔の近くまで持っていきゆっくりとながめている。
「そのカップ、私もとても素敵だと思っているんです、ここもあそこも素敵なデザインで。」

よいと思っている商品の時にはいつも少し喋り過ぎてしまう。
そう、この少し行きすぎた褒めちぎり方は
カップを楽天市場に出品したときに書いた説明文のまんま!
聞いてみると、お客さまはなんと、以前私がこのカップのことを書いた楽天のブログを見て
お店に足を運んでくださったという。
他のカップより少し高めの価格だったせいかお客さまは少し迷っているようだった。
次の仕事もあり、あとは店のスタッフにバトンタッチした。

閉店後、そのお客さまがパラゴンは買わなかったが
他のお品物を買っていかれたという話を聞いた。
それもまたアンティークのカップ、口が広くひらいた白磁に
コスモスのように細い花びらが描かれていたもので、
そのカップも大変素敵だった。その方はお母さまと一緒にいらしていて、
そのお母さまも昔のものだが雰囲気のある木製のキャビネットをご購入していったそうだ。
あぁ、きっとお客さまのお家の食器棚は可愛らしくて趣味の良い
アンティーク食器がたくさん並んでいるんだろうなぁ、
少し悔しくなるくらいに趣味のあう(と私が勝手に思っている)お客さまだった。

素敵だと思っているものを、同じように
素敵だと思っている人と話すのは本当におもしろいですよね。
今回はパラゴンのカップを見にいらしてくださったお客さまのお話でしたが、
以前須田菁華の碗皿を見にいらした方は
旅行先で窯元を訪れた時のことをお話ししてくださいました。
皆様もぜひ、お好きなものの話をしにお店にいらしてくださいませ。
きっと、楽しい時間になると思いますよ。

<文責 田渕>

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