モノ語りヒト語り

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「法被とコオロギ」

「くらしのくら」ではお買い取りした品物を店やネット、ネットオークションだけではなく、実際のオークションでも販売している。

 オークションといえば、海外ではクリスティーズ、サザビーズ、日本では毎日オークション、シンワオークション、エスト・ウエストオークションズなどが知られている。そういうオークションにも何度か出品しているが、手数料が高く、ある程度のレベルで勝負することになるので、そう頻繁に出品できるものでもない。

 今は、もっぱら「市場(いちば)」と言われる業者が集うオークションが主な出品先となっている。市場はそれぞれ専門の分野に特化していることが多い。
「くらしのくら」は家具などを主に取り扱う市場から、骨董品専門、着物、洋食器や雑貨、ブランドバッグなどを扱う市場など、アイテムに応じて七つの市場に出入りしている。時代を反映して、市場の買い手は実店舗のリサイクルショップよりネット販売者が次第に増えている。また、骨董の市場は数年前より勢いは衰えたものの、中国人の進出で落札価格が高騰し、日本人が手を出せなくなっていることも少なくない。

 その中の一つ、小さい規模ながらおよそ何でも扱う道具市場に出品した。
毎月一回の開催で、贈答品から骨董、絵画、掛け軸、貴金属、新物(アラモノ・韓国のり、お茶、インスタントラーメン、クッキーなど今販売されている食品)など、受け入れないモノは無いといってもいい「玉石混交」の品々がでてくる市場である。段ボール箱から品物が盆に載せられ一巡していくのだが、買い手は目の前にきた数十秒で自分に合った玉を探し出し、競っていくのだ。

 わたし達は、店ではなかなか売りにくいものや、数が多すぎてさばききれない贈答品や雑貨などを毎月出品している。軽トラック一台くらいの量(ダンボール箱で40~50箱)を二時間ほどで競り落としてもらう。

 だが、売るだけではなく買うこともできるので、目は離せない。そんな折、ほかの贈答品と一緒のヤマの中に法被(ハッピ)とコオロギが入っていた。(ヤマとは一つ一つの品物が売れないときに、落札を誘うために商品の載った盆をまとめていくこと)

 その法被の背紋には松尾芭蕉の手をひく「のらくろ」が・・・・
衣文(えもん)掛けにかけて袖を広げると、祭りの雰囲気が醸し出されるのが不思議である。

粋ですねえ!
奥の細道へ旅立つ松尾芭蕉をサポートしているのであろうか。江戸から戦前、そして今へつながるドラマティックなイラスト。(漫画の「のらくろ」は戦前に少年倶楽部に連載された田河水泡の人気漫画である。主人公である野良犬の「のらくろ」 が帝国陸軍をモデルにした犬の軍隊の二等兵として活躍する。戦後も時代背景そのままに続いていた)

 そして今、その「のらくろ法被」が世田谷の「くらしのくら」に飾られている。
時代も地域も超えてこの法被が誰かの祭りを待っている!ような気がする。

 その雑貨のヤマにもう一つ、コオロギのミニチュアが入っていた。
鉄製の精巧な置物である。
交換会の帰り道、車のダッシュボードに飾ってみた。
コオロギ君、部屋の中にいるより居心地が良さそうだ。

急ブレーキをするとすぐ倒れるので運転が慎重になったのは、このコオロギ君のおかげである。

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