モノ語りヒト語り

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ある日の出来事 結城紬編

「家に残していた最後の一枚なんです」
その日、お客様が店頭に持ってこられたのは薄い草色の着物。
「結城紬ですね。草木染のいい色です。百亀甲の絣もしっかりとしていて」

「ありがとうございます。亡くなった母のものです。着道楽でいつも着物で出かけていました。
ほとんどの着物は叔母が引き取ってくれて、何となくこの一枚だけ手元に置いていたんですが、
やっぱり着ないかな、と思って」

聞けば、優しい色合いが気に入って残していたが、次第に自分には色が明るすぎるのでは?
と思ったそうです。
家族から受け継いだ着物を年齢が追い付いたら着ようと思い、しまっているうちに、
自分の歳が着物を追い越してしまうことは、『着物あるある』です。

査定額をお伝えすると、
「わかりました。それでお願いします」
「あ、少し店内を見ていいですか?食器が好きなんです」
「ごゆっくりどうぞ」

ここで少々、余談です。
『くらしのくら』は総合リユースショップですが、リサイクル着物専門店に負けないほどに
着物部門に力をいれています。
着物専門店には行きにくい人でも、 着物を買いたい人も、売りたい人も ウエルカムです。
そして、着物を探しに来たお客さまが、「あら、この絵、うちのリビングにピッタリじゃない?」と着物のことは忘れてリトグラフをお買い上げ、というケースは、
『くらしのくらあるある』の代表格なのです。

さて、先ほどのお客さま、洋食器のコーナーを隅々までゆっくりとご覧になると、
「じゃあ、これをください」
北欧のおおらかなデザインのお皿をお買い上げです。

「母の着物がこのお皿になって家に戻るのもいいでしょう?だいぶお釣りがあるけど」

母の着物がどこかで着物好きな人に着てもらえれば、きっと喜んでくれると思う。
その記念がこのお皿なの、とフフッと笑うお客さま。

そんな素敵な考え方にスタッフ一同ほっこりとした気持ちになり、後姿を見送りながら、
それこそがリユースの存在意義なのではと少しばかり身の引き締まる思いでした。


<イメージの写真です>

<文責 大石>

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